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BLOG-ROMMER 日高のブログ

Cogent DataHub

先日の記事中、アキバNET館展示各社の中で特に注目しているのは、先日弊社がテクニカル・パートナー契約を結んだCogent Real-Time System社である。この会社が提供している「DataHub」というソフトウェアは一言でいえば、各種の組み込みシステムにおいて統一的に扱える「リモート・ユーザー・インタフェイス」を利用可能にするものである。


組み込みシステムでは一般に、利用し易いLCD等の表示機能やキーボード等のスイッチ類を持たない場合が多い。しかしながら組み込みシステムに対する要求は進化し続け、人間(操作員)といかに的確にコミュニケーションできるかというのが、今でも課題である。機械、装置、設備や自動車などの分野では、コンピュータ(マイコン)が導入されていることは珍しくないが、ヒューマン・マシン・インタフェース (HMI)、またはマン・マシン・インタフェース (MMI) とも呼ぶものである。Cogent DataHubは一挙にこの問題を解決することができるソフトウェアである。通信の媒体とは独立して、組み込みシステムとインタラクティブにコミュニケーションを行う機能を提供している。

従来はこのような用途には SNMP (Simple Network Management Protocol) が標準的に用いられ、また近年では組み込みシステム側にhttpで専用ページを表示するサーバ機能「Web UI」を使用する方法が広まっている。しかしどちらの方法もある程度のリソースを必要とし、また標準的な「見せる手段」までは提供していない。Cogent社のDataHubはこのような問題の解決に役立つ。さらには、M2M (Machine To Machine)コミュニケーション分野で重要な機能である、複数のインタタラクティブな双方向データを変換したりまとめたりするゲートウェイ機能(ブリッジ、トンネリング、アグリゲーション)や各種のロギング機能を持っている。

製品紹介

従来のDataHubは「OPC DataHub」と呼ばれ、OPC用途向けのデータ変換とビューア機能を提供していた。
しかし2月1日に発表となる最新版のv7.0からは、OPCに依存しない汎用的な目的で使えるデータ・ブラウザ機能を提供している。(補足説明:OPCとは?OLE for Process Controlの略。COM/DCOMを利用した標準インタフェース/プロトコルで相互接続可能なサーバ/クライアントを規定している。日本OPC協議会のページに詳細情報が掲載されている。)

特筆すべきは、Silverlight 4の技術に基づいたDataHub WebViewである。Silverlightベースといっても開発者が直接XAML(Silverlightで取り扱う画像情報を記述したXML)を書いたり、C#のプログラムを作成したりする必要はない。勿論開発者が自前で独自のシンボルを作って利用することも可能であるが、ツールキットには数十種類のテンンプレートとなるシンボルが含まれているので、独自のデータビューを切り張りで容易に作成可能である。Cogent社の話では今後、このツールキットに登録されているシンボルを2000程度までに拡充して行くとのことである。

このDataHub WebViewには各種の動的なグラフ表示やメーター類のほか、プロセス・コントロール(プロセス制御)分野で良く使われるプラントを構成するアニメーション付装置類や、各種の操作パネルをテンプレートとして用意していて、個別に画像を作らなくても色、形状、アニメーションのカスタマイズが可能となっている。またWebViewでも同等機能がサポートされているが、Cogent DataHubの主要機能の中で頻繁に使用される機会が多いと思われるDataHub QuickTrendと呼ぶ時間軸での動的グラフ表示を行う機能は、利用制限無しの無償で公開される。汎用的かつカスタマイズ可能なユーザー・インターフェースはプロセス制御、組み込み分野だけでなく、前述のホームページに開催されている通りディーリングやファイナンス等の金融分野でも活用可能である。

Cogent DataHub v7の他の機能としては、従来通りのCOM連携の機能を継承しながら、システム・モニターやブリッジ、トンネリング、アグリゲーションなどのゲートウェイ機能が強化され、ロギング機能では簡易スクリプト言語を使用して、データベースへの直接の書き込みも可能になっている。システム・モニター機能は複数のDataHub が動作しているPCの状態を常時監視する機能である。CPU負荷、メモリ使用量、ディスク使用量、プロセス情報などを他のDataHubデータと同様に扱う事が可能で、簡単な設定によりPCのリモート管理機能をすることができる。この機能だけで、専用のリモート・メンテナンス・ツールと同等以上の監視を行う事が可能だ。

組込み用途のリモートUIとして利用する

弊社ではこのDataHub / OPC DataHub のクライアント側の機能をすでに弊社が輸入している、SystemBase社のEddyシリーズに移植を完了して動作確認済である。Eddyシリーズの主力製品は、名刺の3分の1程度の大きさで400MHz動作のARM9搭載超小型CPUモジュールである。小型ながら4ポートのシリアル・ポート(RS232 / RS 422 / RS485)、最大56ポートのGPIO、SPI、I2C、ADC等をサポートしている。しかしながらCPUモジュール本体にはスイッチやLED等も含めて一切のユーザーインタフェースを持たない。まさしくDataHubは、このEddyシリーズ向けのソフトウェアだと言える。実際にデモ用アプリケーションを開発して試したところ、VC# / Windows Formを使用しても1週間以上はかかると思われるメーター、時間軸グラフ等のグラフィックUIが、Web Viewを使用すれば1時間程度で開発できることがわかった。以下がEddy DK 2.1上で動作しているDataHubクライアントから送られて来るデータを表示する、1時間で作ったWebView画面である。


この様に組み込みシステムの開発・運用に有効なツールであるので、弊社では今後各種の組み込みプラットフォーム向けにCogent DataHubのクライアントを移植して行くことを考えている。すでにEddyシリーズを始め、XPort pro (Linux) やSH系のボードでは動作しているので、世界で20種以上のボードで動作実績がある.NET Micro Frameworkを始め、他の組み込み環境への移植を推進したい。

アキバNET館への期待

前回紹介したアキバNET館は、11社が出展しているネットワークと組み込みシステム技術の情報発信と交換を行って行く場である。ここではその場で、デモやセミナ、イベントができるのが特長である。日新システムズ / LANTRONIX社のXPort Proでは動作しているので、この場をCogent DataHub の接続性検証の場としても活用して行く予定である。