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BLOG-ROMMER 日高のブログ

Microsoft Buid 2021 "Future of Technology with Kevin Scott"

今年も Microsoft Build が開催された。Buildは 第1回開催以来、毎年5月に開催されるMicrosoftの開発者向けの最大イベントである。

新型コロナウイルスの影響で今年3月の Ignite 2021 と同様、全て無料でオンラインで48時間通しでの配信となった。同一内容を含めて300以上のセッション全てがアーカイブされ、興味あるセッションは後から視聴できるようになっている。

Future of Technology with Kevin Scott

ここでは今回のアーカイブの中でお勧めしたいセッション 「Future of Technology with Kevin Scott」 を取り上げて、ネタバレを交えて少しだけ解説したい。このセッションは AUDIO TRACKSJapanese を選択する事により、優れた専門知識を持つ通訳者による流暢で正確、分かり易い日本語同時通訳を聞くことが出来るので、特にお勧めだ。

Kevin Scott 氏は、チーフテクノロジオフィサー (CTO) 兼 Technology & Research エグゼクティブバイスプレジデント である。かつて Goodleに在籍したこともある彼は、副社長としてLinkedInを救い、Microsoft のLinkedIn買収に伴って Satya Nadella 氏によってMicrosoft のCTO に任命されたという経歴がある。

今回のBuildで意外なことは、IoT と Windows に関するセッションが例年と比べてかなり少ない点である。
特にIoTは、Azure Sphere と Mixed Reality 関連を除けば、このセッションしか無いと言える。

巷ではIoT幻滅期に突入したという意見もあるが、このセッションでKevin Scott は普及期に入ったIoTを語っている。
実際のところIoTとEdge, AI等の取り巻く技術が世の中に浸透し始めて、芸術活動から、バイオテクノロジーや環境保全の様な人類の課題を解決する手段として普及し始めている。以前の様にIoTの事例紹介やIoTをどうやって実現するかとかの実験段階ではなく、特にIoTと呼ばずに利用するツールになって来ていると感じた。

ジェイコブ・コリアー Jacob Collier

2017年に第59回グラミー賞を受賞した YouTuber のジェイコブコリアー Jacob Collier のリアルな世界ツアーを MIT Ph.D でクリエイティブ・テクノロジストのベンブルームバーグ Ben Bloomberg がサポートしたストーリーが興味深い。

Ben Bloombergは、例えば17種類の楽器を演奏するYouTube動画を観客を待たせること無くライブで実現するために、ハーモナイザーとルーピングシステムを組み合わせた自家製アナログシステムとWindowsを組み合わせ、複雑なハーモニーを素早く重ね、彼の初めてのワールドツアーを成功させた。

新しい技術を組み合わせて、芸術家のアイデアを実現させた例である。演奏家が楽器だけではなく、メディアを使って自分自身を表現する様になるというのは、Ben の指導教授が提唱していることだ。

この件は、下記 Behind the Tech シリーズ Podcast で、Kevin Scott氏がかなり詳しくまとめている。技術者にはソフトウェア開発やハードウェア・ガジェットにとどまらず、ペンタトニック・スケールの様な楽器演奏の知識も求められるのか?という興味深い内容まである。

Adafruit

Adafruit は組み込みエンジニアなら誰でも知っているアメリカの著名なコンピューターガジェットメーカーである。ビデオに登場するMIT出身の女性技術者、Limor Friedが彼女の学生時代、2005年に設立して世界中で製品が利用されている。

このセッションでは Adafruit Raspberry pi Lobe kit を使用してAIアプリを作成し、画像認識学習、パン屋の商品画像認識レジスターを素早く実演するデモが紹介された。

Microsoft Lobe はどこでも機械学習モデルを容易に作成して学習させる無料のツールだ。

Lobe は、先日開催の IoT ALGYANの6周年記念イベント ALGYAN6周年IoT祭2021 において ソラコム松下さんのセッション でも紹介され、やはり短時間で学習と認識が出来るデモを行っていた。

余談だが Adafruit命名の語源となった初めてのプログラマーAda Lovelace がプログラムを書いた150年前、計算機が音楽の様な芸術作品を創造する可能性があることを指摘していたと言われるのが面白い。

OpenAI GPT-3

Microsoft が出資している OpenAI社 は最近、AI利用の自然言語処理APIのサービス OpenAI GPT-3 をリリースした。

インターネット上にあるあらゆる言語データから学習するとされる自然言語処理モデルは、ベータ版ながら高性能なため登録者だけが限定的に利用できる。

セッションでは次の OpenAI プロジェクトが紹介された。

DALL-Eを使えば、例えば「赤いコートを来た赤ちゃんペンギンがピアノを弾いている」といった、分かり易い言葉で説明するとその画像が生成される。クリエイターや開発者が抱えている画像調達の問題解決に役立てることを目指している。

David Baker 博士

従来の実験という大変な作業をデジタルラボとネットラボで効率的に分散出来、生物学そのものを計算対象とする非常に強力なバイオラボを実現可能にする事例が紹介された。Washinton大学の生化学教授 (Ph.D)で プロテインデザイン研究所所長のDavid Baker 博士は、分子構造と機能をデザインすることを重点課題としている。

研究チームは、タンパク質のDNA三次元構造、相互作用を知ることでソフトウェアを使用して、コロナウィルスの侵入を阻止するタンパク質を設計し、臨床試験が進行中である。

Kevin Scott セッションまとめ

30分という短い時間ながらKevin氏のセッションは、この様に最新かつ革新的な技術情報が盛り沢山で濃厚な内容となっている。彼は気候変動との闘い、高齢化が進む社会の医療と介護、パンデミック対処、その他の危機といった人類の課題は大きく沢山あり、解決のためには、長い時間と資源が必要で、地球上の全ての人に影響すると語る。テクノロジーが意味を持つのは、良い未来を創造できるようになるため。そしてそれら問題のためにテクノロジーを提供していると結んでいる。

Build 2021のまとめ

そのほかBuild 2021のセッションで、自分が気になっている状況を簡単に示す。

Windows Development 関連では全般的には2021年11月リリース予定の .NET 6 / .NET MAUI / Blazer のマルチプラットフォーム関連のセッションや情報が多かった印象である。しかし開催時期が、Ignite 2021からそれほど経っていないためか、やや中途半端な内容もあった。

例えば、Project Reunion は Previewでバージョン 0.8 になったがまだ制約が多く、今後に期待される。

.NET セッションで紹介された .NET Framework から .NET への移行を自動的に行うという .NET upgrade Assistantを、セッションを見た後で実際に試してみた。テンプレートのままのプロジェクトは正常動作するものの、実際の自分のアプリケーションではエラーが多く、利用できないことがわかった。

4/22に発表のVS2022のプレビュー版は、今年夏のプレビュー公開予定だが、5月はまだ夏ではなかったので、名前が出ただけである。夏になるのが待ち遠しい。

Satya Nadella 氏がキーノートで「次の Windowsは過去10年間で最も重要なアップデート」と言いながら、結果的にWindows周りの情報は少なかったのは事情があった。Build 2021終了後、「次のWindows」の発表イベントが6月24日にオンラインで開かれる ことが明らかにされた。