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BLOG-ROMMER 日高のブログ

アキバNET館と.NET Micro Framework

すでに各種メディアでも紹介されているように、1月27日に若松通商ビル6Fに アキバNET館がオープンした。



弊社ではこの場を利用して今後、出展業者の皆様と「組み込み」「ネットワーク」分野での製品・サービス開発の連携を深めるとともに、新技術の発表とユーザーとの交流の場として行きたいと考えている。また今後は、弊社運営の各種セミナーもこのキバNET館を中心に展開をして行く予定である。

アキバNET館への出展企業は、弊社と関係が深いところが多い。まず弊社はMicrosoft社のパートナーであり、Embedded Partnerでもある。LANTRONIX社は、2003年のXPortシリーズ販売当初から製品を扱わせて頂いている。日新システムズはそのXPortシリーズの国内総代理店であり、サポートでも世話になっている。SystemBase社の組み込みボードは、2009年から弊社で輸入し、取り扱っている。CQ出版の書籍には2000年から執筆させて頂き、各種セミナ・イベントでも協力関係にある。

新しいパートナー企業としては、先日弊社がテクニカル・パートナー契約を結んだCogent Real-Time System社がある。この会社の主力製品のCogent DataHubは、リモート・ユーザー・インタフェイスとデータ交換を行うミドルウェアである。クライアント、ゲートウェイ、ホストの各環境で動作する機能をサポートしていて、アキバNET館に出展の各企業の製品群を繋ぎ合わせる、「接着剤」として機能するのではないかと期待している。すでに弊社では、DataHubのクライアント側をSystemBase社の超小型LinuxマイコンボードのEddyシリーズに移植して稼働させている。Eddyシリーズは小型で非常に豊富なIOを持つが、データ交換やユーザーインタフェース機能が乏しいので非常に良い組み合わせだと考えている。詳細は別の機会に紹介したい。

関連記事のリンク
出展企業
デバイスドライバーズのプレゼンテーション資料



1月21日のオープニング・セレモニーにおいて発表したプレゼンテーション資料を紹介するとともに、アキバNET館に対する期待を以下に示す。

「電子の街・秋葉原」の復活

実は私の秋葉原の街との関係は古く、3~4才ごろまで遡る。父親の勤務先が、秋葉原の電気街の中にあったので、幼いころに何回か訪れた事があった。頻繁に電気街に出入りするようになったのは、小学校3年生ぐらいのころからだ。父親の影響を受け、ラジオやアンプを自作するための部品を買い出しに来た。時代とともに技術が徐々に進化して、購入部品も真空管からトランジスタ、ICへと変わって行った。高校生になった頃からは一時的に秋葉原への足は遠のいたが、社会人となり、マイクロ・コンピューターやコンやパーソナル・コンピューターの登場とともに再び秋葉原へ出かける機会が増えた。幼いころは勿論、つい10年ぐらい前まではいつ行っても何か「新しいもの」「自分の知らないもの」があるというワクワクする感じが、秋葉原にはあった。

秋葉原の様子が変わって来たのは1990年代の終わり頃からであろうか。フィギュアやアニメ等の電気・電子以外の文化が秋葉原の街に入って来る事に関しては否定しないが、従来の白物家電を中心に扱っていた電気店がみなパソコンショップと変わり、そしてパソコンショップや部品屋が閉店したり、名前が変わったりして、少しずつ様変わり出したのはこの頃だと思う。今では秋葉原と言えばメイド喫茶発祥の地であり、AKB48の本拠地である。かつて存在したかなりの電気・電子の店が、最近では閉店・統合されるとともに元気が無くなり、同時に電気・電子好きの我々のワクワク感も薄らいできている。

その理由は、日本国内でモノ作りを余りしなくなったからである。モノ作りの中心は労働力が安い海外に移り、家電は勿論のことパソコン、マイコン等の産業と秋葉原との関係が薄くなってきた。しかしまだ秋葉原には、若松通商のように30年以上電気と電子で商売をやっている店もあり、またそれぞれ期待する商品を求めて出入りする人たちも少なくない。ここは一つ、子供の頃から世話になって来た電子の秋葉原の街を復権させなければならないと、若松通商の室井社長の意思に深く感銘し、協力したいと考えたのがアキバNET館に参加した一番の理由である。

組込みソフトウェアは進化しているか?

私が初めて、仕事として組み込みシステム開発の世界に足を踏み入れたのは1984年である。当時最新鋭と言われたMC68000マイコン(MC68K / 8MHz)を使用して、4KB ROM / 64KB RAMの環境用のプログラムを、VAX/VMS 750上で動作するWhite Smith社製クロスコンパイラやアセンブラを使用して開発していた。デバッグ時にはMotorola BUG のデバッガ・モニタのほかに、剣山(けんざん)の様なPODが付いたICE(正確には68KのPODは剣山とは似て無い)を使用してアセンブラ表記ながらソースコードデバッグができる様になっていた。この年は、6MHz 動作の80286を搭載したPC-DOSが動作するIBM PC-ATが販売された年である。

たまたま現在、Freescale Coldfire マイコン 166MHz 16MB ROM / 8MB RAM等をターゲットに開発・デバッグをしている。アセンブラでデバッグする機会は無くなったが、昔覚えたマシン語が今も動作している。組み込み用のハードウェアはだいたい20倍~100倍以上速く、また大容量になったが、一般的な組み込みソフトウェアの開発環境は、アセンブラのソース表示がCやC++の表示に変わり、デバッグ端末がEclipseになり、ICEがJTAGになった程度しか進化していない。若い人がプログラミングを経験する年齢が下がって来ていることもあり、プログラマの人口は増えているという統計もあるようだが、他の用途向けの進化したソフトウェア環境と比較してとっつき難い面があって、組み込みエンジニアと呼ばれる分野のプログラマは、日本国内では決して増えていない様子である。弊社ではここに注目して、アキバNET館を組み込みエンジニアへの情報発信基地として利用して行きたいと考えている。

.NET Micro Framework

弊社が2008年から評価・実験・移植しているMicrosoft リサーチ(Microsoft内の研究組織)が開発した.NET Micro Frameworkを利用することで、組み込みシステムのソフトウェア開発の敷居がかなり下がるのではないかと考えている。.NET Micro Framework のアプリケーション開発の主力であるVC#という言語は、開発環境(Visual Studio, VC# Express)の出来が良いことも有り、非常に開発効率が良い。極端な事例で言えば、「エディタを終了させた瞬間に思った通りのプログラムが出来ていた。」という経験を何回もさせてくれる。通常のプログラミングでは、ソースコード編集後にコンパイラをエラー無く通す作業と、その後プログラムが実行した結果を自分の思った通りする作業が必要である。プログラマが頭の中で思い描いた動作と、作り出したプログラム(オブジェクト・モジュール)の動作は、プログラムが生まれ立ての段階では異なるのが常である。この両者を一致させる作業がデバッグである。VC#を使用したプログラム開発では、コンパイル・エラーを通す作業のほとんどがエディタで可能であり、デバッグも不要か、もしくは簡単に済む場合が多い。

C#はまた、基本的にオブジェクト指向の言語なので、新規にプログラミングを勉強しようという初心者に対して、筋がよいプログラミングの流儀を習得し易いというメリットもある。原則としてポインタが使えないので、組み込み向けの言語仕様としてはそれなりの苦しさはあるが、代替手段もあり、後発のプログラミング言語だけに結構良く出来ている。個人的にはもっと、普及しても良いプログラミング言語だと考えている。

いろいろな開発者と.NET Micro Frameworkや組み込みシステム開発にVC#を使用する話をした時に、「組み込みシステム開発というのは簡単では無く、とっつき難いものであり、安易に初心者プログラマには携わって欲しくない」という様な、敷居を下げることに対して否定的な意見も聞いている。それはそれで筋が通った話だとも思うが、私自身は「それでもやはり普及させたい」と考えている。理由は、いずれ組み込み開発と他の開発の境界が無くなると予測されることと、たとえ初心者プログラマが参加するにしても、誰も参加しないよりはずっと良いと考えているからである。伝え聞くところでは、工業高校や高専(高等専門学校)ではすでに授業で、VC#をプログラミングの教材として使用しているとの事だ。かつて某大学では商用ワープロを使わなくて済むようにと、TEXの手打ちで卒業論文を書かせたという逸話も聞いた事があるが、現場の先生方の「便利なものは何でも使う」という貪欲な知恵に感服している。

これからの予定

1月25日発売のCQ出版インタフェース誌 3月号 の特集は、C#と.NET Micro Frameworkである。私が書いた.NET Micro FrameworkをLinux環境に移植する記事の掲載は、翌月の4月号に持ち越されてしまったが、興味のある方にはお勧めである。

アキバNET館および主催する若松通商では今後、弊社が輸入しているEddyシリーズGHI Electronics社のFEZ シリーズインタフェース誌 2010年6月号付録SH-2AボードLCDタッチパネル拡張基板 WKLCD-2Aを始め、数種類の.NET Micro Framework が稼働する環境が公開、販売される予定である。弊社はアキバNET館に参加することが目的ではなく、アキバNET館から始めることを目的としているで、これからの情報発信に期待をして頂きたい。

しかし2月と3月はENEX2011への出展(Microsoftブースにおいて.NET Micro Frameworkを使用してEnOceanの無電源エコ・スイッチのを情報をクラウドに上げるデモ等を実施予定)、「組み込みネットワーク&クラウド開発技術ワークショップ」のセミナー(.NET Micro Frameworkの移植と組み込み機器のクラウド接続開設予定)、Microsoft MVP Global Summitとイベントが立て続けにあるので、セミナー等の詳細予定がまだ決められない状況である。セミナーやイベントのスケジュールに関しては決まり次第、順次発表をして行く予定である。